設立の歩み

日本医療ソーシャルワーク学会は、臨床現場の医療ソーシャルワーカーを主体とした学会です。現場の医療ソーシャルワーカーを中心とし、医療ソーシャルワーカー同士が支え合い、医療ソーシャルワーカーが運営する医療ソーシャルワーク実践のための学会です。

医療の高度化、複雑化、介護とのシームレスな連携など多くの課題を抱える医療介護現場において、真の患者支援が求められており、医療ソーシャルワークの実践力はより必要とされています。

設立宣言

医療ソーシャルワーカーは、いつの時代でも一人ひとりの患者・家族の抱えている療養問題・生活問題に向き合い、患者・家族とともに悩みながら解決の道筋を求めてまいりました。今、私たち医療ソーシャルワーカーはその立場性を問われる危機を迎えています。
わが国では財政難を理由とし医療制度改革・社会福祉制度改革が推し進められ、その歪みは「医療崩壊」「介護崩壊」として日本全国に拡がり、医療現場の環境の厳しさが増してきています。在院日数の短縮化への攻勢はその加速度を増し、在宅医療を支える社会資源も未整理なまま、病院医療から在宅医療への移行が推進されています。
医療ソーシャルワーカーはこうした医療の潮流に影響され、業務のウエイトも退院援助のみに極端に偏り、しかもスピードが求められる状況に至っています。さらに、患者本位・自己決定を尊重する専門職であると肝に銘じつつも、患者やその家族の思いに添い続ける援助が困難になってきています。
厚生労働省が策定している「医療ソーシャルワーカー業務指針」すら臨床現場で実施しにくくなり、良心的な医療ソーシャルワーカーほどその実践上の悩みを深めています。
ここにいたり、私たちは『医療ソーシャルワークにアイデンティティをおく』日本医療ソーシャルワーク学会として、学会員の総意をもって以下の点を表明いたします。
I. 患者本位の立場から、医療の場における生活問題を提起し発信することで、「より望ましい社会への変革者」たるソーシャルワーク実践を目指します。
II. 医療ソーシャルワーカーが医療ソーシャルワーカーとして豊かな実践を展開できるよう、環境整備のための研究を進めます。
III. 医療ソーシャルワーカーが「育ちあう」ことを基軸におき、自らの実践力を高める研修を重ねてゆきます。

日本医療ソーシャルワーク学会
2010年8月1日 日本医療ソーシャルワーク学会第1回福岡大会にて

学会ロゴマークのコンセプト

基本構成としてはMedical Social WorkerのMSWとNipponのNを日の丸の赤を象徴的にロゴの真ん中へ配置して図案化し、平和の象徴である鳩が医療ソーシャルワーカーと同化して未来へ羽ばたく躍動感を表しています。また個別援助技術の面接をモチーフとして、二羽の鳩が向かい合い傾聴している姿勢を表しています。

学会変遷

日本医療ソーシャルワーク学会は2009年9月、日本医療ソーシャルワーク研究会から学会へと名称変更しました。学会が創設されたのではなく、医療ソーシャルワーカーたちの長年の研究、研修活動の積み重ねの末に、一つの形になって生み出されたといえます。
 その変遷の概略を列記しておきます。
 「医療ソーシャルワーク研究会」の前身は1994年(平成6年)まで遡ります。当時「医療福祉士」仮称案が厚生省(当時)から提示され、精神科領域のソーシャルワーカーはもとより、社会福祉研究者の間でも医療ソーシャルワークの専門性の議論が活発に展開されていました。幅広い情報を共有するために、ささやかな人数ではありましたが、マスコミ陣までも加わった全国的な研究会として「医療ソーシャルワーク研究会」が名古屋を中心にもたれていました。
 「医療ソーシャルワーク研究会」の事務局を担った村上が広島市安佐市民病院から広島国際大学医療福祉学部の教員に転出したことを機会に、育て支えてくれた医療ソーシャルワーカーたちが医療ソーシャルワーカーとして生き残れる研修体制をつくりたいと思い立ちました。
 当時、関西学院大学のサバティカルでアメリカ、セントルイスのワシントン大学に留学されていた荒川義子先生に相談するとすぐに意は通じ、国際電話やFAXで当研究会のコンセプトを「MSW同士がお互いに支え合う研究会」であること、「お互いに勇気づけ、元気づける研修会」を目指すことなどを確認し合いました。
 荒川先生が帰国されるのを待って、1998年5月23日、医療ソーシャルワーク研究会は先生の基調講演をもって設立研修会の産声を上げたのです。その時の先生のテーマは、留学中の直腸癌の入院手術体験をもとに、MSW、医療者に向けた「援助者の姿勢」に関する鋭い問題提起でした。その後、「出前研修」のスタイルで各地に出かけての小グループのワークショップを重ね、200人規模の大会を年に1回から2回開催できるくらいに成長し、今回の学会への飛躍にまで至りました。

2023年 理事体制及び職務担当表

顧問京極高宣・児島美都子・炭谷茂・住居広士
会長中川美幸
副会長村上須賀子(会長代行) ・大垣京子・下村幸仁・森﨑千晴
事務局長安武一(事務局員:川端静)
事務局 中川美幸・大垣京子
財務担当    安武一
倫理委員会委員長      下村幸仁
委員  鏑木政彦・野田秀孝・和田光徳・金蔵常一
教育部 養成研修     大垣京子・笠藤晋也・梶平幸子・藤洋介・澤近敦子・齊藤美紗・立石昌子
大会担当     三役・事務局
研究部調査研究     村上須賀子・下山幸仁・中川美幸・渡邊佳代子・徳富和恵・竹中麻由美・高石麗理湖
出版部出版事業担当   村上須賀子・高石麗理湖
学会誌担当    大垣京子・村上武敏・渡邊佳代子・佐渡裕紀・工藤隆治
ニュース担当   森﨑千晴・笹原義昭・徳富和恵・當銘由香・中村有紀子
渉外部 三役
監事竹内一夫・折原重光